手術・治療

角膜移植

角膜移植

当院では、第2代院長らを中心に1960年代から角膜移植が始められています。
当初は全層角膜移植のみでしたが、1980年代に第5代院長らを中心に深層層状角膜移植(DLKP)を開始し、後のパーツ移植への発展の礎を築きました。
1990年代からは世界中で術式の研鑽と開発が飛躍的に進み、現在ではパーツ移植と呼ばれる角膜の部分(上皮、実質、内皮、輪部)に応じた移植を行うことが可能になっています。

全層角膜移植(PKP)

全層角膜移植とは、角膜全ての層を移植する方法です。角膜混濁、浮腫、不整による視力障害に対して適応となります。

全層角膜移植術(PKP)

適応となる病状・疾患

角膜の内面の細胞(角膜内皮細胞)が機能不全となっていて、かつ角膜が混濁した病状の方が良い適応となります。水疱性角膜症、重症円錐角膜、再移植など。

拒絶反応

提供者の角膜内皮細胞や移植片に対し手術後に15~25%の頻度で拒絶反応の危険があり注意が必要です。拒絶反応が生じると急に角膜の浮腫が生じるため白く見難くなり、放置すると角膜が白濁しますが、早期に治療が出来れば改善が得られるケースも多くあります。

欠点

糸の縫い目や角膜同士の適合状態により角膜乱視が生じます。乱視が強い場合は術後にハードコンタクトレンズや白内障手術などによる視力矯正が必要な場合もあります。
通常角膜抜糸は術後1年以上経過してから行います。

角膜内皮移植(DSAEK、DMEK)

角膜内皮移植とは、健常な角膜内皮細胞のついた薄い移植片を前房内から空気を用いて角膜後面に接着させることにより角膜内皮機能を回復させる手術方法です。
移植片の厚みによりDSAEK(80-180μm)、DMEK(50μm)に分けられます。
DSAEKの場合、移植片の接着が得られた後、1か月単位でゆっくりと角膜の透明性が回復します。
一方、DMEKは丸まったデスメ膜1枚を前房内で伸ばして移植する方法で、やや難しい手術になりますが、成功するとDSAEKよりも速やかに角膜透明性が回復し良好な結果が期待できます。
全層移植と異なり、術後の角膜乱視はあまり生じません。

適応となる病状・疾患

角膜内皮細胞の機能不全により生じる水疱性角膜症やFuchs角膜内皮ジストロフィにより視力低下している方でかつ、角膜の混濁が少ない方が適応になります。

拒絶反応

全層角膜移植に比べて少ないですが、DSAEKでは10%弱、DMEKでは1%程度の方に生じることがあります。

全層角膜移植(PKP)や角膜内皮移植(DSAEK、DMEK)の場合、長期的にみると移植された角膜の内皮細胞は減少し続けるため、一定数以下に減少すると再移植が必要になることがあります。

深層層状角膜移植(DLKP)

深層角膜移植とは、表層角膜移植術(LKP)よりも深部まで切除を行い、実質全層を移植する方法です。内皮細胞層など、更に深層の組織は残します。表層角膜移植(LKP)よりも透明度が良好です。また、全層角膜移植(PKP)よりも拒絶反応が起こる確率を抑えることができます。比較的難易度の高い手術です。デスメ膜が穿孔した場合はPKPへ変更になる場合があります。

角膜比較1
角膜比較2

適応となる病状・疾患

角膜内皮細胞が健常で、かつ角膜が変形または混濁した病状の方が良い適応となります。
角膜実質ジストロフィ、角膜実質混濁(角膜感染症後など)、円錐角膜など。

特長

全層移植に比べて技術的に難易度が高く時間が多少掛かりますが、自分自身の内皮細胞が温存されるため、上述した内皮細胞由来の拒絶反応は全くなく、長期的にみると内皮細胞の減少が少なく安定します。
視力回復の程度は全層角膜移植と同等です。
角膜乱視は全層移植と同等か少し少ないくらい生じます。
角膜抜糸は術後6か月を目安に行います。

角膜輪部移植、強角膜片移植

健常な角膜輪部組織を移植することで、眼表面の角膜上皮を健常に回復させる手術です。

適応となる疾患

角膜幹細胞疲弊症、眼類天疱瘡、スティーブンスジョンソン症候群など。

特徴

他者の輪部組織に対する術後の拒絶反応は30-50%と高い割合で生じるため生着が難しいですが、生着が得られると角膜の透明性が改善します。

角膜上皮シート移植

角膜幹細胞疲弊症(角膜化学熱傷後など)に対しては、健常な自分の反対眼の組織を採取して透明な角膜上皮シートを作成して移植する治療(ネピック®)も2020年より可能になっております。

注意点

合併症・偶発症について(術式により異なります)

術中合併症の頻度は少ない手術ですが、脈絡膜駆逐製出血という合併症があります。角膜移植術(主に全層角膜移植)では1000人に1人程度生じると言われ、高度の視力低下が生じます。過去に手術暦のある眼、高血圧、糖尿病、動脈硬化の場合に起こりやすくなります。特に高血圧は危険因子となりますので、充分な血圧のコントロールが必要となります。

手術後の注意点

拒絶反応

拒絶反応は1、2週間~数ヵ月後の間に起こる事が多く、発症頻度は10~30%です。(PKP:15~30% DSAEK:10~15% DLKP:5%以内と言われています)
稀に数年後に起こる場合があります。拒絶反応が発症した場合は、ステロイド等の免疫抑制剤の全身投与や、結膜注射を行います。多くの場合治癒しますが、早期治療が大変重要です。治癒せず、混濁が強い場合は再移植を行います。

外傷

眼に強い衝撃が加わると、縫合部分が破裂してしまうことがあり、注意が必要です。

当院ではPKP、LKP、DLKPに対してアドバンスドフェムトセカンドレーザーを使用しています。

角膜移植における角膜切除・切開を行います。高速レーザー照射により、切断面が非常に滑らかで、患者さんの角膜とドナーの角膜共に同一形状で、均一な厚みの角膜切開が可能です。

費用について

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手術名 一般 高齢者
3割負担 1割負担 2割負担 3割負担
角膜移植術
(角膜代別)
入院 220,000円 70,000円 70,000円 220,000円