主な病気

角膜疾患

角膜変性症

角膜変性症とは

角膜に沈着物が貯留して徐々に混濁していく病気です。
様々な種類があり、遺伝するものもあります。以下に代表的な疾患を示します。

帯状角膜変性

角膜表面にカルシウムが沈着して混濁した状態です。
角膜内皮細胞の機能低下や、糖尿病や腎疾患などの基礎疾患のある方でカルシウム代謝機能が低下することにより生じる場合もあります。PTKやEDTAといった治療が有効です。
遺伝することはありません。

顆粒状角膜変性

角膜の浅層に次第に顆粒状の混濁が増加していく病気です。
Avellino角膜ジストロフィもこの中に含まれます。
混濁が増加して瞳孔領が覆われると視力が低下します。PTKが有効です。
遺伝することが多いです。

格子状角膜変性

角膜内に格子状のアミロイド物質が貯留することにより混濁が生じ、角膜中央がスリガラスのように混濁すると視力が低下します。
再発する角膜びらんが生じ易く、びらんにより痛みが出ます。
混濁が強くなると、深層角膜移植が必要になります。
遺伝することが多いです。

治療

PTK

角膜の表層100μm程度をエキシマレーザーで切除することにより混濁を消失あるいは軽減させます。手術時間は短く、綺麗に仕上がり視力回復が期待できます。
術後に遠視化するため、眼鏡の更新などが必要になります。

EDTA洗浄

角膜上皮を剥離した後、低濃度の酢酸(EDTA)を塗布することによりカルシウムを融解させます。PTKに比べて大分手術に時間が掛かりますが、PTKでは取り切れない強い混濁に対して行うことがあります。

深層層状角膜移植(DLKP)

角膜混濁を除去することにより視力の回復が可能です。
拒絶反応が非常に少ないため、長期経過は良好です。
10数年後に角膜変性症が再発することがあり、その場合は再移植が可能です。
角膜抜糸、HCLによる矯正などで視力が回復するまでに6か月~1年程度かかります。

全層角膜移植(PKP)

混濁と共に内皮細胞が少ない場合は、この手術が必要になります。
術後も長期的には角膜内皮細胞は減少し続けるため、数年後に再移植が必要になる場合があります。

水疱性角膜症

水疱性角膜症とは

角膜の透明性を保つポンプの役割をしている角膜内皮細胞が減少することにより、角膜に水が溜まり浮腫を起こして角膜が濁っていく病気です。
次第に角膜表面に水疱が形成され、痛みが生じます。
長く時間が経つにつれて、角膜に内皮機能が回復しても元に戻らないほどの強い混濁が生じます。
原因は、複数回の手術による損傷、閉塞隅角症などによる自然脱落、Fuchs角膜内皮ジストロフィ、レーザー虹彩切除後、角膜移植後の代償不全などです。

治療

角膜内皮移植(DSAEK/DMEK)

角膜の透明性がある程度残っている場合は、この手術が可能です。
全層移植に比べ創口が小さく、術後の拒絶反応のリスクも少ないためより安全です。

全層角膜移植(PKP)

角膜混濁が強くなった場合は、この手術が必要になります。
内皮移植に比べると術後に強い乱視が生じるため、視力の回復に限界があります。

いずれの手術後も、長期的には角膜内皮細胞は減少し続けるため、数年後に再移植が必要になる場合があります。

円錐角膜

円錐角膜とは

角膜の中央から下方にかけてが徐々に薄くなり前方へ突出していく病気です。
疫学的には数百人から数千人に一人の割合で見られます。

若年者に発症することが多く、10代後半~20代での進行が目立ちます。
原因は不明ですが、アトピー性皮膚炎や眼周囲のアレルギー疾患をお持ちの方に合併することも多く、眼を頻繁に強く擦ることで進行するとも言われています。
重症になると急性水腫(角膜内に水が溜まり、角膜が突然白く濁る状態)を生じることがあります。

症状

角膜が突出することにより不正乱視が生じ、視力が低下します。
見え方としては物が変形して見えたり、二重に見えたりします。
進行して急性水腫という状態になると、さらに急激に視力が低下することがあります。

治療

病状の初期から中期まではハードコンタクトレンズ(HCL)による視力矯正が可能です。
中期以降では、特殊なHCL(カスタムHCL)による矯正が必要になります。
進行期の進行を抑制あるいは停止させる治療である角膜クロスリンキングが近年注目されています。早期発見し、早期治療が望ましいケースもあります。
重症になるとHCLでも視力矯正が出来ず、角膜移植が必要になります。
角膜移植の種類は、角膜混濁(急性水腫)がある場合は全層角膜移植(PKP)の適応になります。
デスメ膜や角膜内皮細胞が健常であれば深層層状角膜移植(DLKP)が可能です。

ハードコンタクトレンズ(HCL)/カスタムメイドHCL

円錐角膜の方は不正乱視のため眼鏡やソフトコンタクトレンズでは視力が出づらく、ハードコンタクトレンズで良好な視力が出やすいです。
治療の観点からも、角膜の突出を抑えるために材質の硬いハードコンタクトレンズの装用が必要になります。ただ円錐角膜の特徴的な形状からゴロゴロしてはめ心地が良くない事も多く、そうように慣れるまで時間がかかります。
レンズが合わないと安定せずにすぐに外れてしまい、治療に支障がでます。既製品のハードコンタクトレンズが合いづらい方には、レンズの形を調整できるカスタムメイドコンタクトレンズを処方します。

ハードコンタクトレンズでなぜ視力が出るようになるのか?

角膜とハードコンタクトレンズの間に涙液が入り込み、レンズの役割をすることで焦点が合いやすくなり視力が改善されます。
この方法は円錐角膜だけでなく、不正乱視や強度の乱視、角膜移植後の方に対しても有効です。

カスタムメイドコンタクトレンズの特徴

当院では医師、検査員、コンタクトレンズ業者が連携をとることで、患者さん一人一人に合ったコンタクトレンズを処方します。
まずベースとなるコンタクトレンズを合わせます。それを元に患者さんの角膜形状に合わせて一から設計し、最適なレンズを作成します。作成後は定期的に検診を受けていただき、必要に応じてレンズのクリーニングや、追加の修正を行います。
また定期的に専門業者が院内に待機するため、レンズのトラブルにその場で対応することができます。

角膜クロスリンキング

主に進行性円錐角膜の初期治療に用いられます。
角膜はいくつかの層で構成されており、その大部分は角膜実質が占めています。この治療では角膜実質に含まれているコラーゲン繊維を強くし、角膜形状を保持することで円錐角膜の進行抑制を期待します。円錐角膜を治すものではないため、治療後もハードコンタクトレンズの装用は必要ですが、最終手段である角膜移植まで病状を進行させない治療として注目されています。
本治療は健康保険が適応されません。自費診療でのご案内となります。

治療方法
  1. 麻酔を点眼します。
  2. リボフラビン液(ビタミンB2)を2分ごとに30分点眼します。
  3. 紫外線を照射します。
  4. 治療用のソフトコンタクトレンズを装用し、治療が終了です。

角膜移植

詳細は「角膜移植のページ」をご覧ください。